「おい、おまえら何やってるんだ」
「あ、いいところに。ねぇ千秋、手貸して?」
「手?」
「うん」
そうして並んで座っているあたしの前に、千秋が腕を伸ばしたので首を横に振る。
「違う違う、隣に座って、こー…手のひら下にして机に置いて。蓬生みたいにちゃんと腕が見えるようにね」
「はぁ?」
「ほらー、はーやく〜」
「諦め、千秋。…が言い出したら、やってやらんと拗ねてまうよ」
「…お前はこいつに甘すぎだ」
「ふふ、におねだりされたら、逆らえんわ」
「ねー、千秋ー」
ぐいぐいシャツを掴んで揺さぶれば、眉間に皺を寄せつつも、隣に座るとダンッと音を立てて腕を置いてくれた。
「んで、これがなんだってんだ」
「ん〜…ちょっと待ってね。えーと、あ!芹沢くーん」
「…はい?」
「ちょっとこっち来て」
にこにこ笑顔で手招きすれば、片付けようとしていたお茶を置いてこちらへ来てくれた。
「……部長も副部長も、おやすみになると言っていませんでしたか?」
「捕まってもうたんよ」
「こいつの気が済んだら休む」
「じゃあ、芹沢くんに質問です!!」
「は?」
蓬生、あたし、千秋の順番で机に置いてる腕を示しながらあることを告げれば、二人から大きな疑問の声があがった。
「はぁ?」
「…え?」
「へぇ…面白いこと考えるわ」
ただひとり、蓬生だけが感心したような声をあげてくれたのはちょっとうれしい。
「…という訳で、どれがいい?」
「どれ…ですか」
「ちょ、待て!なんで俺がそうなる!」
「的を射てる思うよ?俺がレア、がミディアム…で、千秋がウェルダン」
「阿呆!納得するな、蓬生!」
「で、芹沢くんのお好みは?」
「聞けっ!人の話!!」
千秋が怒鳴るのはさておき、目の前で困った顔をしてる芹沢くんに尋ねれば、彼は暫し沈黙した後、こう答えた。
「…申し訳ありません。どれも高級品で…自分には選べません」
「おぉ…」
「上手い逃げ方やね。芹沢くん」
「では、私は片付けがありますので…」
「…阿呆ばっかだ」
ぺこりと頭を下げて片付けに戻ると書いて、逃げた芹沢くん。
さて、次は誰に聞いてみようかな。